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日比谷ステーション社労士事務所

「飲酒検知の誤作動で自殺」は労災 ~ 新聞記事より1~

2015.03.06

2015年2月25日(水)の日経新聞によりますと、飲酒検査で検知器が誤作動し、アルコール反応が出たため自殺に追い込まれたとして、東京都内の路線バスの運転手(当時51歳)の遺族が労災認定を求めた訴訟において、裁判長は誤作動を認めて「強い心理的負荷を受けた」と判断し、遺族補償年金などを支給しないとした労働基準監督署の判断を取り消しました。

 

事件の概要

亡くなられた運転手は、都内のバス会社に勤務をしていた2008年に、飲酒から約16時間後の出勤時の検査でアルコール検知器が反応し、約1週間後の検査でも再検知され、会社の事情聴取などを受けた数日後に「恐くてたまらない」と遺書を残して自殺しました。

男性は、その4年前にも検知歴があったため、周囲に「クビになる」と漏らしていたそうです。

裁判長の判決理由によりますと、「会社側は、アルコールが検知されること自体が乗務員の落ち度という姿勢だった」と指摘した上で検知器の誤作動を認め「運転手は近いうちにまた身に覚えのないアルコールが検知され解雇されると誤信し、強い心理的負荷を受けた」と自殺と因果関係を認めました。

 

会社の対応

この事件については、ネット上でも色々と書かれていました。その中で、アルコール検知器が反応してからの会社の対応についての内容も多く見かけました。

記事の一つによりますと、訴訟で会社側は、2回目の検知については誤作動だったと認め、「運転手の男性に説明した」と証言をしましたが、判決は運転手の男性の遺書の内容などから「説明しなかったと推定できる」とし、そのうえで、「退職せざるを得ないとの男性の誤解を強めさせたことは明らか。」としたとしています。

また、他の記事には、2回目の検知で反応があった際、会社が血液検査を提案する、運転手の上司が運転手の自宅を調査して調理用の酒を持ち帰るなど、懲戒処分を前提とした対応をとったと書かれてありました。

 

今後すべきこと

今回の判決では、会社側の行き過ぎた責任追及が問題になりました。アルコール検知器が反応した際に、「誤作動である」という可能性を全く視野にいれず、ひたすら運転手を責めたことが、運転手を自殺に追い込んだと判断されました。

 

会社には、「使用者責任」というものがあります。「使用者責任」とは、使用者が、従業員が業務中等で第三者に損害を加えた場合、それを賠償しなければならないとする使用者の不法行為責任のことをいいます。つまり、使用者責任においては、使用者自身は実際に不法行為をしていなくても、その従業員が不法行為をした場合は、その従業員と同様の損害賠償責任を負担することになるということです。

そのため、会社側の従業員の管理はとても大切になります。

しかし、今回の事件のように、事実確認をあまりせず、「不法行為をした」と決めつけ、従業員に責任を追及した場合などは、従業員に過大な心理的負荷を与えることになり、取り返しのつかないことになることもあります。

「従業員が不法行為をしたかもしれない」という事態が発生した場合、冷静になって「事実」を客観的に見られるように、常に意識しておかなければいけません。

 

経営者の方々の周りで起こる出来事は本当に様々で、経営者の方々にとってそれぞれの出来事一つ一つが大きなストレスになっていると思います。そのような中での「従業員の不法行為」は冷静さを失わせるものになると思いますが、その時に「ちょっと待ってください。」と一言声をかけ、お話をじっくり聞いた上で、次にとるべき行動をアドバイスするのも社労士の大切な役割の一つであると思っています。

 

経営者の皆さんには、少しでも心の負担が軽くなるよう、皆さんの「伴走者」として社労士を頼っていただければと思います。